2009年11月21日 (土)

武奈ヶ岳

良く晴れた日曜日は嬉しい。
それが山登りを予定している日曜日だったりすると尚更嬉しい。

そんな山登り日和の日曜の朝、私たちは山へ行くためバス停へ向かった。

京阪出町柳駅前の京都バス乗り場は・・・朝7時半にしてすでに長蛇の列!
ほぼ全員が山ウェアに身を固めた中高年だ。

ここのバス停からは滋賀県の比良山系へ西側(京都側)からアプローチできるバスが出ている。

しかもそのバスは朝・夕の1日2本しかない。
登山客は当然朝の1本に乗り込む。
混んで当たり前だ。

臨時バスが出たにも関わらず座れなかった私たちが、1時間揺られて降りたのは「坊村」バス停。

ここから目指すは滋賀の名峰、武奈ヶ岳―
標高1214m、日本200名山に名を連ねた山だ。

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バスを降り、比良山荘脇の道に入る。

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紅葉の美しい橋を渡るとそこからはいきなり急登の続く山道だ。

グループや単独での登山者が、みんな同じような時間帯に一斉に登っていくので、このあたりは道を間違える心配はしなくても良さそうだ。

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私たちは落ち葉を踏みしめながら歩いた。

晩秋の山は乾いた空気感が気持ちいい。
夏の山はムンムンと湿っていて重みを感じる。
土も木々も人間も、汗をかきかき呼吸をしている、そんな活力溢れる湿り気がある。

その点、秋が深まってからの山はひっそりと乾いている。
前日に雨が降ったその日曜日ですら、土こそぬかるみはあれど木々も空気も軽い。
山全体が軽やかなのだ。

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標高が上がってくると落葉した木々が増えてくる。
雪が降るとまた違った美しい景色になるに違いない。

登り始めて2時間半、最初のピークである御殿山に到着。

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目指す武奈ヶ岳山頂はもうすぐだ。

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猫バスが通りそうな山道を進み…

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ススキたなびく稜線を行く…

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稜線から眺める左右の山の木々はほとんどが落葉しており、太陽の光を受けて銀色に輝いている。

銀色の樹木の中に時折混じる緑の針葉樹と落葉前の赤く色付いた木々が幻想的で美しい。

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もうすぐだ。ガンバレ、次男!

そしてついに―

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ヤッター!
武奈ヶ岳登頂!!

山頂で食べるラーメンはおいしかった。

  *****     *****

この後はいつもながら過酷な下山(私にとっては)が待っていた。

登りよりも下りるときのほうが足に負担がかかるのだ。

この日下山を開始したのは12時45分。
登り口と反対側の琵琶湖方面へ下山したので距離も長い。

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下山したけど駅はまだ遠い…

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山を背にして“なかなか駅に着かなくてがっくりする次男の図”。

最終的に山を下りきって目指すJR比良駅に着いたのは17時だった。

お疲れ様でした~

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2009年8月27日 (木)

白山・その5

室堂で荷物を整理し、下山することに。

さようなら、室堂。

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ご飯とお味噌汁のおかわり無料サービスが嬉しかったよ…
布団が一人一枚ずつあって嬉しかったよ…

またいつかここに来ることを誓いつつ、私たちは帰路についた。

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下山は登りよりずっとキツイ。
登山時の疲れもほどよくたまっていて、うっかりすると足を滑らしそうになる。

アブナイアブナイ。

子供たちは全く疲れ知らずで、いつものことながら下りのスピードは本当に速い。

…が次男だけがペースダウンし始めた。
どうした?

どうやら靴ずれができかけているようだ。

こんなときは・・・
ガサゴソ・・・

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マリオバンド~!

今年は不要かと思われたキャラクターバンドエイドがやっと役に立つときが来た。

―やっぱり山登りと言えばマリオバンドは必須よね。

靴擦れの次男には申し訳ないが、母はほんの少し嬉しかったりもした。

バンドエイドのおかげで元気になった次男を含め、子供たちはどんどんペースを上げて下りていく。

私たちはついていくのがやっとだ…
イヤ、もう無理!!

子供たちは先頭のN西♂(この人はフルマラソンを走るだけあって私たちとは別格)に任せ、残りのオトナ3人は年相応のペースでゆっくり下山することにした。

あぁ、膝がわらっている。
ゆっくり下りないと・・・

3人が自分たちとしては非常に頑張って最速のスピードで山を下りきったのは、先頭のオトナ1人+子供3人がふもとに着いてから随分あとのことであった。

来年は負けないように頑張って体力つけようっと。

   ***     ***     ***

白山登山が終わって我が家の夏は終わった。

しかし私の中では山登りは今年で終わりではないのである。

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帰ってからすぐに買ったのは愛読誌『ヤマケイJOY』。

目線はすでに来年の夏山!
来夏はアルプス??

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2009年8月25日 (火)

白山・その4

翌朝は室堂周辺から御来光を拝む。

やまぎわすこしあかりて…

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御来光―

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太陽はぐんぐん上がっていき、山肌を照らす。

視界は良好。
雲があちこちに見えるけどまずまずのお天気だ。

私たちはまとめた荷物を室堂の一角に置かせてもらい、身軽になった状態で山頂を目指した。

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雲の中に入っているのだろう。
上に行けば行くほど霧が立ち込めた状態で、湿った空気が心地良い。

大きな虹が次々と現れては消え、また現れる。

黙々と歩き30分ほどで―

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白山御前峰登頂。
標高2702m。

この後、私たちは山頂付近にある火口湖や万年雪、高山植物を見て歩く「お池めぐりコース」をたどって荷物のある室堂へ戻った。

それにしても今年の白山は子供たちにとっては楽勝だったようだ。

天候に比較的恵まれたことが最も大きな要因だろうが、1年前の山登りでは次男の必須アイテムだったマリオバンドは全く不要だったし、おやつ休憩もほとんどいらなかった。

長男は長男で自分の荷物+αを持って山に登れるようになったし。

マリオバンド持参で山に挑んだ母としては少し寂しいような気もする・・・

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2009年8月22日 (土)

白山・その3

“高山植物の宝庫”と言われるだけあって、夏の白山は様々な花で彩られていた。

森林限界を越えるとこんなお花畑があちこちで見られる。

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曇天でも十分美しいが、青空の下であったらどんなにきれいな光景だろう。

「黒ボコ岩」から宿泊地である山小屋「白山室堂」へ向かう道は、木道で整備された「弥陀ケ原」に入る。

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この木道は歩きやすさだけでなく、高山植物を保護する目的もあるのだろう。
高山植物は生長が遅く、人間に踏み荒らされた地は生態系が変わってしまうそうだ。

弥陀ケ原を抜けて白山室堂へ続く石道に入る。
振り返ると・・・

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雄大な風景が広がる。

ここまで来たら室堂はもうすぐだ。

ガンバレ ガンバレ…

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ヤッター!
室堂到着!!

標高2450m。
ここから山頂へは40分ほどで着くらしい。

思ったよりずっと早く着いたので、のんびりと宿で過ごす。
去年の富士登山を思い描いていたので少々拍子抜けなくらいだ。

思えば富士は過酷であった・・・

白山は緑が美しく、年によるのかもしれないが水も比較的豊富で、富士のように殺伐とした感じがない。

宿の布団も一人一枚!(←富士山では二人で一枚)
スタッフもなんだかおっとりとしているように見える。

白山だけが特別な山なのか?
それとも富士山だけが特別な山なのか?

いやいや、それにしても「白山の翌年に富士山」でなくて良かった。

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2009年8月20日 (木)

白山・その2

<白山にはいくつもの登山ルートがある。
今回私たちは己の実力と天候を考え、最もメジャーな「砂防新道」を行くことにしていた。>

吊り橋からスタートした砂防新道はしばらくは水の音を聞きながら山道を進む。

遠くに見える、濃き緑の山の中腹から流れ落ちる滝が白い糸のようで美しい。

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清々しい水音に混じって何やら工事音も聞こえる…
と思ったら、山道のすぐ脇に工事のお兄さんたちが。

なるほど。
“砂防”新道やもんね。
お仕事、お疲れ様ッス・・・

   ***   ***

心配した雨も霧雨程度だったので、途中休憩した中飯場でレインコートを片付ける。

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トイレと水補給を済ませ、再度出発!

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ここから次の休憩ポイントである甚之助避難小屋までは1.9km。

ここまではマリオバンドの助けも借りず、おやつの出番もほとんどなかったが、この先はどうかな…

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夏の山は緑が美しい。
ただ美しいだけでなく、向こうの山から湧き降りてくる雲が神々しさを醸し出している。

私たち一行7名は甚之助避難小屋も通過し、霧煙る山道をひたすら歩いた。

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さぁ、次のポイントの「黒ボコ岩」はもうすぐだ。

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ヤッター!
標高2320m!!

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・・・しかしキミたち余裕だね。

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2009年8月19日 (水)

白山・その1

前にも書いたかもしれないが、私の目下の愛読誌は―

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『山と渓谷』
『ヤマケイJOY』。

そして我が家のファミリーレジャーに関しては、私はかなりの力で決定権を握っている・・・フフフ・・・。

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…というわけで子供たちのブーイング(注:次男によると「お友達のうちはどっこも山なんか行かへんのになんでウチだけ~」。)には全く耳を貸さず、今夏の山は日本三名山の一つ、白山に決定!

   ***   ***   ***

早朝の金沢駅で夜行バスから登山バスに乗り換え、雨模様の町をバスに揺られること約2時間―。

霧雨の降る白山砂防新道登山口“別当出合”では、合羽を装着した登山客が次々と山に向かって出発していた。

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私たちもリュックにカバーをかけ、いざ出発!

まずは目の前の川にかかっている吊り橋を渡る。
まるで映画『ゆれる』に出てくる橋のようだ。

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反対側から人が来なかったから良かったものの、交差するのはちょっと怖そうだ。

犬が苦手な長男なぞは、向かいから来るのがチワワだったとしても大パニックに陥ること間違いない・・・

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橋は結構長く、最後尾を歩く私の足元はみんなの振動を受けてゆれるゆれる。

コラコラ。
走るな子供!

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2009年1月 3日 (土)

高見山

あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

…年明け早々のブログが年末の話というのもなんだが、年末のある日オットと二人で山に行ってきた。

登った高見山は標高1248m、奈良県と三重県の県境に位置し、冬季には霧氷・樹氷が美しい名山だ。

なんでも“関西のマッターホルン”と呼ばれているらしく、1月末~2月の霧氷シーズンにかけては多くの登山客で賑わうそうだ。

シーズン中の混雑を避けるべく、ちょっと早いがそのマッターホルン・関西版に霧氷を期待して出かけた。
2008年の登り納めだ。

08123002近鉄榛原駅からローカルなバスに揺られること1時間余りで登山口に到着。

その日は比較的暖かな日曜で、登山口周辺はもちろん、周囲の山にも雪らしいものは見当たらない。

ダメかなぁ…

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他には登山客はほとんどいない冬枯れの山道を黙々と歩く。
子供たちがいないのであまり休憩をとることもなく、ただひたすら歩く。

歩き始めて約1時間、08123004時折霜柱が見られるようになってきた。
そして木々の切れ間から見え隠れする山頂をふと見上げると・・・

うっすらと白くなっている!!

これは期待できそうだ。
足取りも軽やかになる。

08123005 そして急な登り斜面となった途中からは下界とは別世界が広がっていた…

落葉した木々には美しい霧氷がつき、白い花が咲いているようだった。

08123006ほんの30分前とは打って変わったような風景に、“関西のマッターホルン”と言われる所以を実感した。

・・・それにしても頂上の寒いこと!

天気は決して悪くないのだが、風がゴウゴウと吹き、フラフラしていると吹き飛ばされそうだ。

私たちは持参した軽アイゼンをつけ、早々に山を下りることにした。

081230071時間も歩くと山はまた暖かな冬の陽だまりに包まれた。
これだから山は面白い。

―今年もいっぱい山に登るぞ。

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2008年10月15日 (水)

伊吹山・再び

前回の5月から再び訪れた伊吹山。

081015ibuki02新緑が爽やかだった前回に比べ、ススキや刈安が風にゆられて山はすっかり晩秋の装いになっていた。

う~ん、秋だなぁ…。

どーでもいいことだけど、今回は初めてマリオバンドの力を借りることなく登頂できた、記念すべき山登りとなった。

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2008年9月27日 (土)

富士山7

午前11時15分、私たちはとうとうニッポン一の山の頂点に立った。
しかしそこは風の吹き荒れる厳しい世界で、記念撮影はおろか、じっと立っている気にもなれない状況だった。

他の登山者たちも同じようで、登ってきた人たちはみな風を避けられる手近な山小屋に入っていく。
私たちもそこへ吸い込まれるように入っていった。

そこは…山小屋ではなく神社だった。

風雨を避けられる場所は悪天候時には本当にありがたい。
神様、ありがとうございます。

だがいつまでもそこにいるわけにはいかない。
天候が回復しそうな兆しはなく、悪化すれば下山できなくなる可能性もあるのだ。

それに8月とは言っても山頂は寒い。
次男は寒くて怖くて「早くバスのところに帰ろう」と涙目で訴える。
私たちはトイレに行ったYちんとオットが戻ってくるのを待って下山することにした。

彼らが戻ってきたとき、ややパニック気味の外人女性が同じタイミングで神社に入ってきた。
なんでも一人で登ったはいいが、下山できなくなってトイレで震えていたとか。

私たちは一緒に下山することにした。

ゴォォ~~~~

神社の外に出ると相変わらず嵐のような風が吹いている。

たった今、やっとの思いで登ってきた岩だらけの登山道を、この風の中下りるのはとても危険なように思えたが、それでも下山道よりは安全らしい。

一歩一歩、着実に足場を見つけ、ソロリソロリと下りていく。
標高が下がれば風が弱くなることを期待しながら…。

下山し始めて改めて気づいたのだが、この悪天候の中でも富士山には種々多様な人たちが登っていく。
関西から来た富士登山バスツアーの団体さんともすれ違ったが、老若男女入り混じっており、中にはガイドさんらしき人に手をひかれたおばあさんもいた。

あのおばあさん、大丈夫だったかな・・・
添乗員さんも大変だなぁ・・・

20分ほど下っただろうか、状況はまだまだ予断を許さないものの、「無事に帰れるかなぁ」という思いから「下山できる」確信へと一行の雰囲気も変わってきた。

頂上で震えていたアメリカ人女性Mさんも
「一人じゃ怖いけど8人だったら楽しいわね」
と言うくらいの余裕が出てきた。

このMさん、一人で富士山に来て夜中に頂上にたどり着いたそうだが、その服装は京都の街中で見るバックパッカーとたいして変わらない。
富士山で何人も同じように軽装の外人さんを見かけたが、彼らはフジが3000m級の山だということを知っているのだろうか?

Mさんに「なんで富士山に登ろうと思ったの?」と聞いてみた。

―フジサンハユウメイナヤマダシ、テレビデコドモデモノボッテイルノヲミタカラ。

「そやけどテレビの子供はそんな軽装とちゃうかったやろ?」
と関西人らしくツッコミを入れたかったが、私の頭にすぐ浮かんだのが

あなたはもっと適切な格好で富士山へ来るべきだったのに…(でもそうしなかった)。」

という、中学英語の英文法を駆使した、受験では○をもらえるかもしれないが実際の英会話ではジョークとして聞いてもらえそうにない英文だったので、黙って微笑みを返すだけにした。

私が余計なことを言わなかったからか、Mさんはだんだん本来の陽気さを取り戻し、元気になっていった。

下山するにつれて風もだんだんおさまり、普通の下り道に変わったので気持ちにゆとりができて会話も弾む。

次男は仲間に加わったMさんをとても気に入った様子で、
「ドゥー ユー ノウ マイケル・ジャクソン?」
など6歳男児にしては気の利いた話題を振ったりした。

彼はMさんがアメリカ人だと知った上でマイケルの話をしたのだろうか?
なかなかやるな、次男・・・

いつのまにか身の危険を感じる山から通常の山に戻ったので、途中からは下山道を使うことにした。

そこは須走口。
「砂を走る」→「砂走り」→「須走」となったというだけあって、砂の坂が延々続いている道だ。

疲れきった足で下りばかりが延々続く道を行く。
しかも止まりたくても止まれない…

これは本当にきつかった。
下山に比べたら、ゆっくり進む登山の何とラクなことか!

080926fuji21しかしそう思っているのは大人だけで、子供たちは楽しくて楽しくて仕方ないようで、3人で競争しながらどんどん先へ行ってしまう。
その姿はみるみる豆粒のようになり…

待ってくれぇぇぇ~~~!!

   ***   ***   ***

午後4時、標高2000mの新五合目をストックを頼りにヨロヨロと戻ってくる、二人の女がいた。

「なぁ、私らって登っていくときに見たヨロヨロした男の人よりひどいかもなぁ…」
「きっと『あの人たちどうしたんやろ?』って見られるねんで…」

私たちは人が見えてくると精一杯元気なフリをして歩いた。
だがその歩き方はきっとロボットのようにぎこちなかったことだろう・・・

   ***   ***   ***

富士登山が終わって私の夏も終わった。
しかし私の登山熱はまだまだ続く・・・

(完)

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2008年9月25日 (木)

富士山6

*** 富士から帰ってきて1ヵ月も経つというのにいまだに完結していないとは…今日こそは終わるぞ…と思いつつ、前回の続き ***

手持ちのウェットティッシュで“脱・鬼瓦権造”した私は日焼け止めクリームを塗るのをあきらめ、バンダナを口に巻いて日よけ・砂塵よけとして出発した。

バンダナの効果はなかなか素晴らしく、「ヒゲ面にならない」というビジュアル面での効果に加えて「口や鼻の中がジャリジャリになるのを防ぐ」という不快指数の歯止めにも威力を発揮した。

おかげで少しは快適に歩けるようになった。

…ような気がしたが依然として風は強く、青かった空もだんだん山の向こう側から流れてくる雲で灰色に覆われてきた。

「早く頂上にたどり着かないと」
と気は焦るが、こう風が強くては思うようには進めない。

風に飛ばされないように必死で足を踏ん張りながら歩き、突風が吹くと地面に両手をついてこらえる…
その歩き方はまるで尺取虫のようだ。

―人間はなんてちっぽけな存在なんだろう。

草木のない岩石だらけの山肌は、どこで落石事故が起こってもおかしくないように見える。

私は万一の場合に備え、歩いている最中も止まっている時も常に上の方の石に変化がないか、神経を張り巡らせていた…その時!

「ブー、ブー、ブー、ブー」

…ズボンのポケットに入れていた携帯のメール着信音だ。

こんなところで、こんな状況で、しかもソフトバンクなのに電波が届くなんて…
全く予期せぬ出来事にやや狼狽しつつメールを見ると

『富士山どうだった?
きれいだったでしょ?』

それは富士登山経験者の妹からの、今のこの状況には似つかわしくない気の抜けたメールだった。

私はすぐさま

『まだ登頂してない!今やっと八合五勺!風が強くて生きるか死ぬかの瀬戸際や!!このメールが下界との最後のやり取りになるかも。』

と返信しようとしたが、過酷な状況にメールを打つのもままならず、『今まさに八合五勺。』と電報並みの短文でよしとした。

―妹なら行間から真意を読み取るだろう・・・

真意も何も、そんな短文から一体何を想像しろと言うのか?

080925fuji19標高は3500mを過ぎ、ますます視界が悪くなっていく。
霧の中を歩いているようで、服の表面がじんわりと濡れる。

登山道を外れた斜面には万年雪が白く積もっているのが見える。
どうやら頂上は近いようだ。

それにしても狭くて足場の悪い、この歩きにくい登山道を、上から降りてくる人たちが多いのはなぜだろう?
富士山は登山道と下山道が明確に分かれているはずなのに。
コース逆行はマナー違反ではないか?

その疑問は山頂間近にすれ違った年配の男の人が解消してくれた。

―山頂は風が強すぎて下山道は危険で降りられない、だからみんな登山道を引き返して下山しているんだ…

ヒエェェェ~~ッ!
風が強い、ってこれ以上ですかぁ?
下山道は使えない、って飛ばされるの??

・・・そしてとうとう富士山頂踏破。

ゴーーーーーッ!!!

「ここは冬山ですか?」と問いたくなるような風が吹き荒れる頂上で、私たちには登頂の喜びを分かち合うような余裕もなかった。

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