法衣
法衣にする反物を染めるための下準備をした。
「下準備」と言っても長さがまちまちの反物4反を、染めに適した長さの3反に揃えるために切ったり縫ったりしただけだから大したことはないのだが、普通の着尺より随分長いだけに扱いにくく感じる。
これから染色し、そこから仕立てに入って・・・何人の手を経て法衣に仕上がるのだろうか?
仕上がりを見ることはできないが、何人もの手を経る仕事の一端を担っていると想像しながら作業するのはなかなか楽しいものだ。
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法衣にする反物を染めるための下準備をした。
「下準備」と言っても長さがまちまちの反物4反を、染めに適した長さの3反に揃えるために切ったり縫ったりしただけだから大したことはないのだが、普通の着尺より随分長いだけに扱いにくく感じる。
これから染色し、そこから仕立てに入って・・・何人の手を経て法衣に仕上がるのだろうか?
仕上がりを見ることはできないが、何人もの手を経る仕事の一端を担っていると想像しながら作業するのはなかなか楽しいものだ。
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「笹紅」という言葉がある。
江戸時代中期~後期にかけて流行った化粧法で、紅(紅花から作った口紅)を沢山さすことで青光りさせ、まるで笹のような色合いに見せる塗り方のことだ。
葛飾北斎の美人画にも描かれているこの「笹紅」、当時紅花は非常に高価だったため、売れっ子の花魁などしかホンモノは使えず、墨の上に紅をさしてそれっぽく見せる方法も流行ったとか。
“黒光りする緑の唇”といえばイカ墨パスタを食べた後の他人に見られたくない顔を想像してしまうが、「笹紅」があんなチープな色合いであるはずはない。
とするとかつて子供たちと一緒に見ていた『魔法戦隊マジレンジャー』の悪役美女“ナイとメア”みたいなメイクなのか?
確か彼女たちは唇が玉虫色だったぞ…いや、紫だっけ…?
・・・いろいろ想像するのも楽しいものだ。
それにしても
―なぜ紅から笹色が?
そう思わずにはいられないが、紅花の赤は純度がとても高い色素なので、重ねると赤い光を吸収して反対色の緑色の輝きを放つため、こう見えるそうだ。
―ふぅむ…わかったようなわからないような…
店主の趣味とはいえ、「元素の周期表」が貼ってあるような工房で仕事をしているわりには化学の知識が身に付いていない私にとっては、字面を追うだけではすんなり「ガッテン!!」と机を叩けない説明文だが、とにかくそうらしい。
―ま、とにかくやってみよう~~~
というわけで中国産の紅花を使って実験してみたのが3週間ほど前。
・・・ナント、抽出した色素を塗った陶器の中で、一部玉虫がかった色合いに発色している部分が!
スゴ~~~イ!!
抽出量がごく微量だったので“ナイとメア”メイクを実践するには至らなかったが、がぜんヤル気になった。
国産紅花だったらもっときれいな紅が抽出できるに違いない。
効率のいい抽出法は??
目下少しでも効率いい方法を検討中。
目指せ、ナイとメア!
いやもとい。
目指せ、北斎美人!!
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私が直接先生役をするわけではないけれど、ワークショップは大概いつも主催する側だ。
―私もどこかのワークショップに参加した~い!
と思っていた時に知った『藍染めで日傘を作ろう』のワークショップ。
即申し込んで待つこと数ヵ月・・・
高倍率だったにも関わらず(先着順でなく抽選だった)、運良く『当選』!!
というわけで
「当たっちゃったしぃ~。これも仕事のうちだしぃ~~~」
と土曜日だけどオットひとりに店を任せ、奈良県大和郡山市の「箱本館『紺屋』」さんへ。
箱本館は大和郡山市が管理する藍染め体験ができる施設であり、ここではなんとすくもを使った天然発酵建ての藍で染め体験ができるのだ!
(ちなみにウチでも天然藍を使っているが化学建てであり、すくもの天然発酵建ては実験的にごく細々とやっているに過ぎない。)
天然発酵建ての藍を使っている染め工房は何軒か知っているが、箱本館ほど気軽に―ウチの化学建ての藍と同じように―染め体験をさせてくれる所は珍しいと思う。
その貴重な場所で『型染めで日傘をつくる』ワークショップ・・・
ウフフ…当たっちゃったもんね~♪
「勉強してきてな~」
と見送るオットの声が何となく冷たいような気がしたのは気のせいだろうか?
*** ***
さて、そのワークショップ、まずは日傘の生地を骨からはずして藍で染めることから始まった。
箱本館では今生きてる藍は4甕ある。
そのうち3甕は今回のワークショップのため?に1月末から2月にかけて建てた比較的元気な若い藍、残り1甕が去年から頑張っているおじいちゃん藍なのだが、地色を濃く入れるために最初は若い藍を使う。
ズブズブズブ・・・
箱本館の藍は甕ごと保温しているだけあって温かく、液中の作業も心地いい。
―藍太郎、藍次郎、藍三郎、ゴメンよ…
私は手を動かしながらも、ウチの工房のベランダで過酷な寒さ暑さにさらされてきた今までの藍たちを思い浮かべ、心の中で静かに詫びた。
適度な温度で保たれている箱本館の藍たちは、ウチで頑張ってくれた藍に比べてのびやかでみずみずしいような気がする。
―人間も藍も本領を発揮するには適度にいい環境が必要だということか?
*** ***
藍甕の中で約2分液となじませた後は水中で酸化発色させる。
ウチの藍だと液から出した途端に空中酸化が始まり青く発色してしまうのに、箱本館の藍は水中で緩やかに発色する。
なぜだろう?
これが化学建てと天然発酵建ての違いなのだろうか?
*** ***
水中で発色させた後、よく絞ってまた“藍甕にもどす→水中発色”を繰り返す。
回数にして約8~10回。
その後、十分な濃度に染まった生地を傘に取り付け、乾くまで干す。
*** ***
乾いたらいよいよ型を彫って抜染(色を抜くこと)だ。
型は箱本館にもいろいろ本格的なものがあるのだが、
「せっかくだから皆さんオリジナルの図案を描いてください」
ということで、紙と鉛筆を持って奮闘。
私はいつもの悪いクセで「自分のだから、まぁええやん」とばかりにサラサラと適当に図案を描いてさっさと型を彫ってしまったが、参加者の皆さんは下絵を予め準備していたり、図案集から写してきた図案を丁寧に彫ったり…ととても慎重に進めていらっしゃる。
もっともオットに言わせるとそれが当たり前の姿勢だそうだ。
確かに・・・
どちらの姿勢が良い結果を生むかは仕上がった日傘を見れば一目瞭然。
最後に抜染剤を落としてもう一度藍甕に入れ、白く抜けた部分に好みで薄い藍を入れて完成なのだが、出来上がった皆さんの作品の素晴らしいこと!!
本当に売りモノの日傘みたい!!!
私のは…
恥を忍んでここで遠目にご紹介。
~街でこの日傘を差した女を見かけても決して声をかけないでください・・・
*** ***
出来栄えはともかく、藍染め体験はとても楽しくタメになった。
箱本館のスタッフの皆様、ありがとうございました!
私も天然発酵建て、頑張るぞ~~~!!
今年は藍四郎で勝負だぁっ!!
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出会いあれば別れあり。
生あるものはいずれ死す。
藍次郎ともとうとうお別れの日がやってきた。
冬を越したとはいえ染める力も弱まり、もう回復の見込みがなくなってきたので石灰を入れるなどの延命治療を施すのをやめたのだ。
あとは自然の流れに任せて・・・
と放っておいたら、暖かくなったせいかすぐに表面にカビが生えてしまった。
カビは細かい波状の形をしており、見方によっては芸術的だ。(←ホンマか?!)
しかしカビはカビ。
このまま野放しにしておくわけにはいかない。
それにそろそろ藍三郎プロジェクトも始動しつつある。
私は意を決して藍次郎の処分に取り掛かった。
作業中は独特の、あまりいいニオイとは言えない臭いが立ち込めるので、作業はお客様のこなさそうな、雨の午後に行うことにした。
藍次郎の蓋を開ける。
カパッ・・・
ぷ~~~~~ん。
独特の臭気が漂う。
しかしその臭気は元気な頃の藍次郎とは異なるニオイだ。
私は思い切ってそのニオイをたらふく鼻腔に吸い込んだ。
…意外とイケル…かも・・・
この場合の“イケル”とは“いいニオイ”という意味ではない。
が、想像していたよりはマイルドなニオイだった。
園芸作業で赤玉土や腐葉土に堆肥などを混ぜ込んで土作りをするときのニオイにちょっと似ている。
藍次郎程度の量なら、腐敗臭というほどのニオイにはならないのかもしれない。
―藍次郎、さようなら・・・
想い出に浸りながらせっせと上澄み液を布で濾しているところへ、学校帰りの次男が現れた。
「クッサ~~~~~!!」
・・・愛情がないとやはりクサイらしい。
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今回染めるのは博多献上帯。
…でも素材は絹じゃない。レーヨン。
以前お客様からのご依頼で博多献上帯を染めたことがある。
とってもいい感じに染まったので、いつか機会があれば自分用にも染めたいと思っていた。
そんなとき出掛けた東寺弘法市で1000円のモノを見つけたので思わず買ってしまった帯地だ。
1000円なんだから、人絹だっていいじゃないか。
レーヨンはポリエステルと違って染まるし。
とは思ってみたものの、いざ染める段階になって重さを量ってみると、同じ柄・長さもほとんど同じなのに、以前染めたお客様のシルクの帯よりレーヨンの帯は約1.2倍重い。
その差約80g。
80gくらい大した違いではないようにも思うが、軽くて締めやすいのが博多帯の身上、シルクか否かで締めやすさにも違いがあるのだろう。
ま、1000円だからいいか。
どうせ普段づかいの帯になるんだし。
* * *
さて今回使う染料は矢車附子という、松ぼっくりの子供みたいなヤツである。
これで白地をダークなグレーにするつもりである。
どのくらい色が入るか不明なので、まずは一度染めてみる。
上がりを見てからそのままにするか、そのあと赤系の染料をかけるか考えるつもりだ。
ウフフフフ。
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例のドングリを使って着尺を染めようと思う。
まずは焚き出し。
ドングリがものすごくたくさんあるので惜し気無く使える。
―着尺重量の300%使おうっと~♪
約2kgとったがストックしているドングリのほんの一部にすぎない。
…じゃあ500%にしてみよっかなぁ。
それでもドングリは無尽蔵にあるかのように見える。
まぁ何回か重ね染めするのでそのうちなくなるだろう。
大きな鍋にドングリをガラガラッと放り込み、水を入れて火にかける。
グツグツ。。。
工房は森の香りに包まれた
・・・ということにしておこう。
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天然染料は大抵の場合、染料自体はそれほど高価なものではない。
が、中にはもちろん例外もある。
その一つに“国産紅花”が挙げられる。
“紅花”ではない。
“国産”の紅花というところがポイントである。
紅花の歴史は古い。
原産地のエジプトでは紀元前のミイラを包んだ布から紅花染めの痕跡が発掘されているというのだから、世界最古の染料の一つであると言えるだろう。
日本へは3世紀頃に伝わり、江戸時代には山形が国内最大の産地として栄えていたそうである。
その紅花、明治に入って化学染料の普及や中国での栽培品種に押され、また戦争の影響で国内での生産は完全に廃れてしまった。
戦後偶然に農家の納屋から紅花の種が見つかったことから、有志により復興されたらしい。
細々と栽培が続けられているのが現状である。
今簡単に手に入る紅花はほぼ間違いなく中国産のものである。
国産の紅花は貴重でなかなか手に入らない。
手に入れるためには「予約」しないといけない。
その予約も2年位先のもの、つまり再来年の夏くらいに開花する予定の紅花の購入を予約しないといけないのだ。
なかなか気の長い話である。
さて、ウチにはそんな貴重な国産紅花がある。
もちろん予約購入したものだ。
もったいなくて滅多なものには使えないのだが、いつまでもウットリと眺めているだけではその真価は発揮できない。
ここはひとつ、気合いを入れて染めてもらおうじゃないか。
…というわけで近々着尺を染めてみようということになった。
もちろん私の。
ウシシ。
しかし紅花の赤は国産品種といえどもおそらく“どピンク”。
これは色無地として着るにはちょっとツライ配色だ。
襦袢にするといい具合になるだろうか。
どピンク・・・
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家族で祇園祭に出かけた帰り道、突然藍次郎のことを思い出した。
「世話しに行かなきゃ」。
今日は日曜日、店は定休日だが天然発酵建てに手をつけるとそんなことは関係なくなる。
ちゃんと毎日世話をしないと藍は調子が悪くなるのだ。
…というわりには祇園祭に浮かれてすっかり藍次郎のことを忘れていたのだが、夕方思い出したので良しとしよう。
私は浴衣を脱ぎ捨て、いつもの作業着に着替えると夕闇迫る中、愛車のママチャリを工房まで走らせた。
「藍次郎、ごめんね~」
と言いつつフタを開けると・・・明らかに体調を崩した藍次郎の姿が目に入ってきた。
藍の華はほとんど消え、液にも勢いがない。
ここ2、3日調子があまり良くなかったのだが、今日は一番具合が悪そうだ。
あせった私は必死で処置をし、一生懸命語りかけながら(←だって植物も優しい言葉をかけながら世話するとよく育つというから)混ぜた。
明日は持ち直していますように。
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「藍は病気がちの子供のようだ」
とはある藍染め師さんが言った言葉だけど本当にそうだと思う。
毎日状態をチェックし世話をしないと死んでしまうので、雨の日も風の日も休みの日も、とりあえず藍次郎坊っちゃんの元に馳せ参じることになる。
今日も雨の休日だったがもちろん坊っちゃんのご機嫌伺いに仕事場へ行った。
「元気かい?」
とポリバケツのフタを開けると、紫色をした藍の華が元気に出ていたのでひと安心。
簡単な染め作業をして攪拌し、pHを測って様子に変わりがないことを確認してから工房を後にした。
で、せっかく街へ出たのだからとついでに映画を観て家に帰った。
何だかちょっと得をした気分だ。
ちなみに観た映画は『約束の旅路』。
長男と同じ9歳の子供が出てくる母子モノなので冒頭から涙腺緩みっぱなしで困った。
でもこの映画は私の中での今年のベスト3にはたぶん入らないだろう。
明日も明後日も藍次郎君のご機嫌伺いは続く。
体の弱い子供を持つ親は大変なのである。
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なんとなくヤバイ臭い(腐敗臭?)も時折してきたりして瀕死の藍次郎を救うべく、用意したのは・・・
スプーン一杯の水飴を灰汁で溶かし、藍ポリバケツに投入。
よぉ~~~~く混ぜる。
ガンバレ・ガンバレ・ガンバレ…
そして次の日も混ぜる・混ぜる・混ぜる。
水飴は前日1回使ったきりでこの日は混ぜるだけ。
…のはずなのに…あれ?なんか水飴が減ってるやん?
そして翌日も…少しずつ減っていく水飴。
怪奇現象か?
と思いきや、犯人はオットだった。
自宅では子供のおやつ用のお菓子にこっそり手を付け、仕事場でも藍次郎用の水飴に手を付けるとは!
** ** ** **
そして肝心の藍次郎はというと…
朝いつものようにフタを開け、「おはよう」と挨拶をしてみたものの、泡は消え、やはり元気がない。
日に日に衰弱していくような気さえする。
もう瀕死の状態なのだろうか?
気を揉みつつ、普段どおりの業務に取り掛かったその時―
「Kさん、見てくださいっ!!」
朝の混ぜ混ぜ作業をしていた「今年こそ藍の天然発酵建てプロジェクト」リーダーABっちが興奮気味の上ずった声で叫んだ。
藍次郎がどうかしたのか?!
慌てて藍ポリバケツを覗くと、そこには今までとはちと違う様子の藍次郎がいた!
紫がかった青い藍の華(藍を建てるときの目安で泡立ちのようなもの)がきれいにでき、ニオイも腐敗臭ではない、独特のものに変わっているではないか!!
さっきまでの状態とは明らかに違う。
瀕死の状態ではなく、花開く前の「眠れる獅子」状態だったのか?!
藍次郎~~~よくやったぞ~~~~~!
(「よくやった」のは藍次郎ではなくABっち?)
まぁ明日の朝になっても容態が急変していないという保証はないのだから、まだまだ完全な勝利宣言(?)をするのは早いが、でもちょっとだけ、いやかなり舞い上がった私は“祝杯”と称して帰りにコンビニで一番高い缶ビールを買った。
藍の神様、藍次郎がこのままきっちりと建ってくれますように。
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毎日の作業は藍次郎のチェックから始まる。
ポリバケツのフタをあけて「おはよう」と朝の挨拶をし、液のph値と温度を測定し、空気を混ぜ込むようによぉくかき混ぜる。
夕方は夕方で再度よぉぉくかき混ぜる。
…という作業を毎日繰り返し、仕込んでからはや10日以上経ってしまった。
が、藍次郎はまだ建たない。
「今年こそ藍の天然発酵建てプロジェクト」リーダーのABっちも「う~ん…」と考え込んでいる。
彼によると「あとひと息!」なのだそうだ。
(でもその「ひと息」がなかなか大変なのである。)
そこで藍次郎に栄養をつけてもらって成長を促すべく、小麦ふすまを投入することにした。
“藍次郎~ごはんだよ~~~。”
ガンバレ、藍次郎!
(注:今回はここでふすまを入れてしまいましたが、藍が完全に建つまではふすまを入れないのが通常のやり方のようです。ふすまは藍がきっちり建ってから維持管理のために使う、というのが多いようです。)
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灰に熱湯を加えて上澄み液をとる作業を1日1回、計6回繰り返し、いよいよ藍を建てる運びとなった。
蒅(すくも)を捏ねる、こねる、コネル…
なかなかのハードワークである。
捏ねた蒅にお酒と灰汁を加え、今度は混ぜる、まぜる、マゼル…
よ~く攪拌したら初日の作業は終了である。
ポリバケツに軽くフタをのせて明日までしばしのお別れだ。
元気な藍が建ちますように。
*** *** ***
明日までお別れと言いながら、藍次郎くんがどうなっているか気になって仕方がない。
もしかするとブクブクと藍菌が活動しているかもしれないではないか。
見たい…でもあんまり何回も覗かない方がいいらしいしなぁ…フタを開けるのは1日2回と決めたし…
覗き見したい誘惑に勝てず、夕方おそるおそる「フタを開けて覗いたらあかんやんなぁ?」と聞いてみた。
するとオットに「去年藍太郎が死んだのは覗きすぎたせいだということを忘れたのか?!」と言われた。
去年藍太郎と名付けて世話をしていた藍が死んだのは決して私が覗きすぎたせいではない。
…が、ちょっとはそれも影響しているかも。
人間でも藍でも過干渉は禁物。
でもやっぱり見たいものは見たい・・・
結局1回だけということで、初日の今日は特別に時間外面会を許してもらい、ポリバケツのフタを取って藍次郎とご対面。
おぉ!
活発に活動している証拠に泡がブクブク出ているではないか!!
藍次郎は生きているぞ!!!
横から覗いたオットがすかさず「これは攪拌する時に入った空気の泡がまだ消えていないだけ」と夢のないコメントを入れた。
そ、そんなことないはずだ。
誰が何と言おうと藍次郎は生きているんだぁ~
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さて、藍を建てるには灰汁というものを作らなくてはいけない。
灰汁とは灰に熱湯を注ぎ、一晩寝かして取った上澄み液のことである。
ここで十分アルカリ度数の高い灰汁を取っておかないと藍はうまく建たない。
灰汁は藍建てにとってとても重要な要素なのだ―(ABっち談)
灰は市内の問屋さんから購入したものもあるし、別ルートから手に入れた徳島のものもある。
せっかくだから両方から灰汁を取ってphを比べてみよう!
ということになったのだがここで一つ問題が。
京都の灰は問屋さんから購入しているだけあって余計なものの入っていない灰である。
但し値段がそこそこお高い。
ハッキリ言って徳島灰の10倍の値段である。
対して徳島の灰は安いのが非常な魅力である。
が、灰になる過程で一緒に焼いたいろいろなものが混じっていて、灰汁をとるためには一度フルイにかけなくてはならない。
…仕方ない。
ベランダ園芸で土フルイには慣れている私が灰フルイをしてあげようじゃないか。
意気込んで駐車場の隅で新聞紙を広げ、灰を篩い始めたものの、灰だけにちょっとした風で舞うわ舞うわ…
おまけに必要量は8kgである。
値段の差はこれか!と納得した。
やっとの思いで必要量を取り、京都灰と徳島灰に分けてスタンバイ。
リーダーABっちが熱湯を注ぐ・・・
そして一晩放置―
*** *** ***
翌日測ったph度数は
京都・徳島対決の1回戦は引き分けに終わった。
ま、当たり前と言えば当たり前の結果だが…郷里を愛する徳島県民ABっちがちょっとだけ残念そうな顔をしたように見えた。
―こうして灰に熱湯を注いで一晩置いた上澄み(=灰汁)を取る作業を6回繰り返し、いよいよ藍を建てる作業に取り掛かる。
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この4月から新スタッフとして来てくれているABっち。
彼は阿波踊りと藍をこよなく愛する、郷土愛に満ちた徳島県民である。
しかも彼はウチにくる前は地元で藍の勉強をしていたという、「今年こそ藍の天然発酵建てプロジェクト」を推進するにはうってつけの人物なのだ。
そんな彼は去年私が失敗してしまった藍太郎(藍は生き物なので名前をつけて世話を焼いていた)のことももちろん知っており、「藍次郎くん(去年が藍太郎なので今年は藍次郎)にはまだかからないんですか?」などと藍を建てたくて仕方がない様子。
さりげなく「去年うまく建たなかったのはphの問題だと思いますよ」と言ったり、(藍を建てるのに必要な)灰をチェックしては「この灰ではダメです!もっと白っぽく完全に灰になったものでないと」と意見したりして、藍プロジェクトが計画倒れにならないようアピールしていた。
私ももちろん藍プロジェクトを実行するつもりだったが、なんだかんだと日が経ってしまい気がつけばもう5月。
GWもとっくに過ぎ去ったある日、ABっちにいつ頃藍を建てるといいかお伺いをたてると「今すぐです!」という返事がきた。
曰く「藍の寿命は約3ヵ月で真夏は避けたほうがいいから…今建てたとしても真夏にかかってしまうし本当はもっと早く建てた方が良い」そうだ。
で、遅まきながら「今年こそ藍の天然発酵建てプロジェクト」が始動。
プロジェクトリーダーはABっち。
副リーダーは私。
店主は…藍に関しては何だかイマイチ盛り上がりに欠けるので補欠。
まず藍を建てるために必要な灰(完全燃焼し尽くした白っぽいやつ)を市内の某灰問屋さんから入手。
他に必要なものとしては石灰と小麦ふすまなのだが、ABっち曰く「石灰は工業用のものでないとダメ」だそうなのだ。
工業用の石灰なんてどこから手に入れればいいんだろう?
ABっちの助言でJAに電話で聞くも京都のJAでは「取り扱っていない」との返事。
困ったなぁ…
同じ石灰だし園芸用でいいか。
だんだん面倒になってきた私が「園芸用石灰でやってみる宣言」をするとABっちは「でもボクが知っているところはどこも工業用石灰使ってますよ」と、口調は穏やかだが明らかに「園芸用じゃあかんっちゅうとるやろ~(怒)!!」という言葉を裏に含んだ答えが返ってきた。
…わかりましたよぉ。
でも工業用石灰なんてどこに売ってるんだろう。
藍プロジェクト、早くも暗礁に乗り上げたか?
と思われた矢先、ABっちが徳島に材料を取りに帰ると言い出した。
え?
ホントに?
いいよ、わざわざ。
と口では言ってみたものの、それは非常に嬉しい申し出である。
かくしてリーダーABっちの英断により、工業用石灰・小麦ふすまと秘密兵器「高級ph測定器」が海を越えてはるばる京都にやってきた。
・・・それにしてもABさん、ポリバケツで藍を建てるにしては石灰もふすまも多すぎません?
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自転車をこぐペダルも軽く、私は市内のとある場所へ向かっていた。
5月にしては異様に暑い午後であったが気分は上々、時折吹く風が爽やかだ。
今日は帯地の制作を依頼している紅型作家チリントゥさんの新しい工房へ、お仕事見学に行くのだ。
しかも今朝チリントゥさんから「今、アオキさんの帯にかかっている途中なんですけど、もしよかったらご自分でもちょっとやってみますか?」という、嬉しくもありがたいお申し出をいただいたのだ。
「え?いいんですか!やります!!やってみたいです!!!」
自分の帯となる紅型の色挿しを体験する―これで気分が上々にならないわけはない。
オットには「自分で色挿し?!絶対やめとき。後悔することになっても知らんで」と反対されたが、ほんのちょっとだけ、自分の帯を作る記念にやってみたいだけなのだ。
良いではないか。
私は鼻歌でも歌い出しかねないほど上機嫌でペダルを踏んだ。
しばらく漕いでたどりついたのは古くからの街並みが続く、住宅街の一角である。
この古き良き時代の香りを残す地域にチリントゥさんは工房を構えている。
ピンポ~ン♪…「こんにちは~」。
にこやかに迎えてくださったチリントゥさんの後について早速作業場を拝見する。
そこには現在仕掛中の生地が4枚、部屋の両端に柱状に立てた棒を利用してピンと張ってある。
私の帯地は…おぉ、あの奥のあれですか?!
近づいてよく見るとそこには見覚えのある古典柄「松・梅・雪輪文様」が…。
こうやって色を挿していくのか・・・
私は頭の中でうろ覚えの紅型の制作手順を思い出した。
…まず型を置いて糊でふせていくんだっけ。
そしてそのあと一つずつ色を挿していくんだったよなぁ。
多色使いだし、配色にその作家さんのセンスとか出るんだろうなぁ…
「色はおまかせいただいたので、私なりにアオキさんのイメージでやっています」
うれしいです・・・
何だかとっても感激した。
個人のイメージを思い描きながら制作してもらえるなんて、これは作家さんと直接やり取りしているからこそ味わえる贅沢である。
喜ぶ私を更に喜ばせるかのごとく、チリントゥさんは紫色の顔料の入った器と筆を用意し、私に色の挿し方を伝授してくれた。
「これは顔料を豆汁で溶いたものなんです。よく混ぜて使うんですけど…筆についた余分な液をなるべく落としてから生地にこうやって色をのせるのがコツです。」
早速真似をしてやってみた。
チリントゥさんが作業の途中で残してくれていた部分に紫色を挿していくのである。
これが…簡単そうに見えて難しい…。
「私がやったところだけ洗いをかけたら色がなくなっちゃったりしませんよね?」
「結局後でやり直していただかないといけなくなって二度手間になったりしませんか?」
「ここってお太鼓になる部分じゃないですよね?」
軽い調子で作業をし始めたものの、いざやり始めると突然不安に襲われた私の矢継ぎ早の質問にもチリントゥさんは「もう一度やるんで大丈夫ですよ~」とニコニコしながら答えてくれた。
紫色の枝状になっている部分の色を挿しているのだが、右側のチリントゥさんが作業した部分はきっちり色が入っているのに対して、左半分の私がやった部分は白っぽくなっていて紫色がちゃんと入っていないことが一目瞭然。
やっぱりシロウトはダメだ。
ダメだとわかったならさっさとやめればいいものを、あんまりこの作業が面白いのでついそのまま続けてしまった。
そして二人で並んで色を挿しながらあれこれ話した。
仕事のこと、家族のこと、沖縄のこと…
あぁ、窓から入ってくる風が心地いい。
いい調子で生地に向き合っていた私だが、オットからの「まだチリントゥさんとこにいるの?」という電話で現実に戻った。
「…すみません。ここだけやったらもう帰ります。」
ほんのちょっとだけ体験させてもらうつもりだったのに、リラックスしすぎて随分長い間図々しくも作業してしまった。
チリントゥさんの修正作業の手間も考えずに・・・ゴメンナサイ。
贅沢な体験を十二分に楽しんだ私は、帯の出来上がりを楽しみにしつつチリントゥさんの工房を後にした。
チリントゥさんにはお手間をかけることとなってしまって本当に申し訳ないが、こうして自分でも味わわせてもらって完成する帯は、他のものとは違う、思い入れの深いものとなることだろう。
チリントゥさん、貴重なひと時を本当にありがとうございました。
そして完成まであとしばらく宜しくお願いします!
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一昨年の秋に仕込んだ自作柿渋。
去年の9月末から自分用の試し生地染めに使っていて、とっくに染め上がっていたのだが、いい色に染まったことに満足して忘れていた。
ふと思い出して久々に見る生地はやはりいい色だ。
この生地を使って何を作ろうか…
染めた生地はそれほど大きくないので小物しか作れない。
考えた結果、帽子屋さんに渡して帽子にすることにした。
製作を依頼したのは近くにあるYUMEYAという帽子屋さん。
ここは友人に教えてもらったところなのだが、生地持込だと2000円で帽子を作ってくれる。
私が心配することじゃないけど、2000円って安すぎちゃう?
そして生地を渡して待つこと約1週間、自作柿渋生地が帽子に仕上がった!
わ~い。
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昨年7月8月とせっせと世話をしていた天然発酵建て藍・藍太郎。
努力も空しく(もしくは世話の焼きすぎか?)、藍太郎くんは帰らぬ人となってしまった…。
その後、秋から再度藍建てにチャレンジするつもりだったがバタバタしているうちに良い季節は過ぎ、そのままズルズルと今に至る。
これではいけない…。
春になったらすぐに再チャレンジしなければ…。
暖かくなったらすぐに藍建てに入るためには、見て見ぬフリをしてきた藍太郎の亡骸(建てるのに失敗したすくも藍の液)を処分しなければいけない。
私は意を決して死んでしまった藍液の入っているポリバケツの蓋を開けた。
・・・ツ~~~~~~~~ン!!
「プ~~~ン」などと可愛く形容できない、鼻をつく腐敗臭があたりに漂う。
死んだ藍の上澄み液は不気味な半透明で、そのニオイにふさわしいドロリとしたかたまりがポリバケツとの境界にこびりついている。
マスクの隙間から入り込んで鼻腔を刺激するキョーレツなニオイに一瞬ひるんだが、気を取り直して液を濾す作業を始めた。
藍はすくもや石灰、小麦ふすまといったいろいろなものを使って建てるので、液といってもそのまま排水溝に流すわけにはいかないのだ。
ク、クサイ…
藍太郎に心底愛情を注いでいた私だが、正直このニオイは臭かった。
ドブのニオイと言えば想像がつくだろうか。
いや、それよりもむしろ周囲をバキュームカーに包囲されたかのようなニオイというべきか。
うう・・・
近未来もののSF映画やアニメなどで、悪の支配する地上から逃れた主人公たちの地下組織が下水溝を使って活動するというようなシーンがあるが、本当に下水溝を行き来したら気分悪くなって倒れるメンバーが続出するのではないか―
ふとそんなことを思ったので、作業の合間にスタッフのR子ちゃんにそう話すと、彼女は嬉しそうにこう言った。
「じゃあ私たちは(ニオイに慣れているから)他の人たちよりも強いですね!!」
・・・
近未来の地下組織の一員として生き延びるために、R子さんには率先して藍建てを手伝ってもらうことにしよう。
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袷の着物を作るためには表生地だけでなく、トーゼン裏地も必要である。
どうせなら裏も天然染料で染めたい…ということで用意したのが白生地の八掛地。
色のイメージは大体決まっているので染めに取り掛かった。
今回の染料はコチニール。
コチニールはある種のサボテンにつくカイガラムシの仲間で、これを使って染めるとかなり鮮やかなピンク(というか「ド派手なピンク」)になる。
媒染によってピンクとは違う色目にもできるので、オットの助言でこの染料にした。
もちろん目指す色は”ド派手ピンク”ではない。
まず最初の染めではピンクにする。
そして鉄媒染…
ここで色が変わるはず…です…が…
あれ?
あんまり色目変わらんやん!!
確かに色のトーンは変わったが、ピンクであることに違いはない。
これじゃあ困るよ~~~
そこで再度オットの助言で染め終わった後の柘榴の残液で色目を変えた。
う~ん。
これは美しい藤色だ。
この色はこの色で表地を染めて着物に仕立てたい色だ。
し・か・し・・・
私が目指しているのはこの色でもない!
そこで再々度オット登場。
今度は染め終わった後の茜の残液に入れ、温度をかけた。
おお!
今度こそ期待できるかも。
洗いをかけて乾かすのは明日の作業である。
それにしてもイメージどおりの色にするのは難しい。
オットも私もまだまだ修行が足りないと再認識した。
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以前三浦清商店さんにて購入したぜんまい紬の帯地用白生地。
手持ちの古い着物に合う帯に仕立てたくて一度茜で染めたのだが、何だかもう一ひねり欲しい。
このままいくか、染め重ねをしてより深い色にするか、迷った末に「絞りで2色に染め分ける」ことにした。
「絞り」と言っても凝った柄にするわけではない。
帯地の巾の4分の1ほどを濃色に染め分けるだけのシンプルなものにしたいのだ。
…とはいうものの、帯地は5m強の長い生地である。
ストールのように短いものならタテに染め分けることはさほど難しくないが、5mの生地となるとまっすぐに線状の絞りを入れること自体がなかなか難しいのだ。
オリジナルな色柄の帯を夢見て、オットの力を借りながら(と言うか絞りはほとんどオット作業?)、なんとか絞りの準備をした。
これをペルナンブコ(ブラジルウッド)の染液に入れ、赤系濃淡2色での染め分けを目指す。
絞りをほどくのは翌々日。
きれいに出来ているといいな。
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前にも書いたが体験教室をやっていると、いろいろな人と出会う。
興味深い情報を得ることができたり、面白い話が聞けたりと、毎回楽しく時を過ごすことができる。
今回染め体験に来てくださったのはチェロ奏者の林裕氏と兵庫県立芸術文化センターの宮地さん。
染料は林氏の持ち込みで「ブラジルウッド」。
「ブラジルウッド」は「ブラジル」の国名の由来になった植物で、茜では出せない「赤」が出る。
なぜ林氏がブラジルウッドの持ち込みかというと、この木はバイオリンやチェロの弓として使われているのだ。(私は当然そんなこと知らなかったけど。)
染料としてのブラジルウッドの役割を知った氏がどんな色に染まるのか興味を持ち、宮地さんに相談した。
宮地さんはネットで調べて林氏の疑問を解消すべく、ウチを探してくださり、今回の染め体験となったというわけだ。
ブラジルウッド―名前は聞いたことがあるけれど実物を見るのは初めてである。
どんな色をしているのか、興味津々。
…思ったほど特徴のある色ではない。
というよりフツー。
これがどんな色を出すというのだろう?
ワクワクしながら染めにかかる姿を見守る。
まずは原木をできるだけ細かく砕く。
これが結構大変。
ちょっとやってみたけどかなりの重労働。
こんなに苦労するなら1カケラたりとも無駄にするまい―染料のありがたみを感じる作業だ。
次に砕いた染料に水を加えて焚き出す。
液もみるみるうちに赤くなる。
そしてストールを染める。
…出来上がり!
と、途中省略したが、その間もずーっといろいろなお話しを伺うことができた。
体験教室なので一連の作業はもちろん林氏によるものだが、こちらが聞いてばかりで…これで良かったのだろうか?
で、結果だが
染め上がりは予想以上に美しい、深い赤!
画像ではわかりにくいが、本当に深みのある赤である。
染め上がりを見て思わず「うわぁ~~~」と声があがるほど美しい。
染めやってて良かったぁ。
こんな機会を与えてくださった林氏、宮地さんに感謝である。
ありがとうございました!
ところで林氏は気さくな温かい雰囲気の方で、お話もとても面白かった。
今回のブラジルウッド染め体験のことは12月に兵庫県立芸術文化センターで行うコンサートで話されるそうだが、とても内容の濃い催しになるのだろう。
クラシックに縁遠い私であるが、このコンサートには是非行ってみたい。
本当にありがとうございました。
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京都クラフトセンターで開催中の「坂田菜穂子のハンドメイドフェルト」展に行ってきた。
坂田菜穂子さんは染織作家さんである。
うちの店に来てくださったお客様との会話から坂田菜穂子さんのお名前を伺い(そのお客様は坂田さんの妹さんであった)、興味を持っていたのだ。
今回送ってくださったDMには「ハンドメイドフエルト」とある
―これは是非行かなきゃ…。
実は私は4年ほど前、原毛からフエルトを作ろうとやってみたものの、見事に失敗して原毛をカチカチにしてしまったことがある。
それ以来フエルト熱は冷めてしまったのだが、やっぱり冬は暖かい小物に惹かれるのが人情、肌寒い季節になると「…フエルト・・・」と時々思い出していたのだ。
で、いそいそと出かけたわけであるが…
行って良かった!
ハンドメイドフエルト独特の暖かい小物がたくさんあった。
中でも気になったのはすご~く手触りが良くて軽いチビストール。
薄手の目の詰まっていない生地に染めた原毛をのせ、生地に絡み付けながらフエルトにするのだそうだ。
原毛の乗せ具合、配色などによって様々な表情のある仕上りになる。
気になりついでに購入。
同じことを大きな布でやればタペストリーにもなる。
(とってもいい感じのタペが掛けてあった)
坂田さんにずうずうしくも作り方を教えていただき、私にとって収穫の大きい展示会だった。
やはりいろいろな人の作るものを見ると参考になるなぁ。
工房のロフトには手付かずの原毛がたくさん残っている。
よし、あれで着物に合うような大きめのストールを作るぞ。
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昨日の朝のこと、工房のベランダで一休みしていたスタッフR子ちゃんが慌てた声で叫んだ。
「Kさん(私のこと)、見て見て!柿渋がぁ~!!」
彼女が指差す先には私が丹精こめて作った自作柿渋の入ったペットボトルが…。
そしてそのペットボトルはなぜかパンパンに膨らんで今にも破裂しそうだった。
柿渋が成長している…
―私はK点に達したペットボトルをそ~~~っと手にとった。
『公園に放置されたペットボトルが爆発!幼児が怪我!』
―中学生がペットボトルに入れた液体からガスが発生し、ボトルが爆発して幼児が怪我をしたというニュースが脳裏によぎった。
柿渋ボトルが爆発したらどうしよう…
―ちょっとビクビクしながらペットボトルのキャップを緩めた。
プシュ~~~~
気の抜ける音と共にペットボトルは普通の形に戻った。
あぁ、よかった…
それにしても1年間冷蔵庫に入れていたときはこんなことなかったのに、外に出したとたんに目覚めたのだろうか。
冷蔵庫に入れずに保存していた方が醗酵が進んでいい柿渋液になったのだろうか?
自作柿渋液に浸して屋根の上に広げた生地を見ながら、来年渋柿を手に入れたら屋外保存で1年間待ってみようと考えた。
でも爆発したら危ないから密閉性の高い容器には入れられないし、蓋なし容器か…
臭いだろうな…
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原因不明のアレルギーが出始めて3年。
私の場合は首と顔面に丘疹状のものが出る。
一時期のように顔が腫れあがって人相が変わるようなことはなくなったが、なかなか完治はしない。
首も服などで隠れている部分はそれほど痒くならないので、家ではタオル、外ではタートルの服かストールを愛用しているのだが、いつも同じ色のストールでは飽きてきた。
が、工房では仕事優先なのでなかなか私物を染めるコンロが空かない。
私物やし、ま、いいか…
テキトーに染めることにした私は茜を一掴み袋に入れ、ストール1枚と一緒に自宅へ持ち帰った。
6時半に家に帰り着き、早速鍋に茜と水を入れて火にかける。
沸騰したら弱火にしてそのままグツグツ煮出すこと約1時間、染液を濾して茜を取り除き、そこにストールを入れる。
本当は温度を上げながらマメにかき混ぜないとムラになるのだが、ちょうどご飯もできたのでストールを入れた鍋を火にかけ、ほとんど混ぜずに放っておいた。
食事を終えてふと鍋を見るとちょうど染液が沸騰しかけている。
見た限りではよく染まっているようなので火を止め、翌朝までそのまま放置した。
翌日染液を捨て、ストールをよく洗って乾かせば完成。
適当に染めたわりにはきれいに染まった。
さすがシルク。
染め甲斐あるなぁ。
仮面ライダーV3か中尾彬を連想させる色目がちょっと気になるが、ストールの完成!
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生の五倍子(ゴバイシ)をいただいた。
届けてくれたのはあるお客様。
染色のキャリアは私たちよりずっと長いこの方はとてもパワフルな方で、今はご自分で店をなさっている。
そして忙しい合間を縫っては野山を巡り、染料を実際に集めて染色をされている。
素晴らしい!
見習わねば!!
とにかく、時々染料の取れる場所を教えてくださったり、今回のように本当の意味で天然の染料を分けてくださったりする、ありがたい方なのだ。
ところで五倍子とはヌルデ(ウルシ科)の木にできる虫こぶのことである。
ある種のアブラムシがヌルデに産卵し、その影響で虫こぶができるのだが、これがとってもいい色に染まる。
ウチでも常時使用する染料の一つであり、お客様からの支持も高い色だ。
日常的に使っている染料ではあるが、恥ずかしながら私は生の五倍子を見たことがなかった。
”ゴバイシ・初体験”
私はウキウキしていただいた袋を覗き込み、中身を観察した。
こんなに美味しそうだとは…!
(パッと見はフルーツのようである)
こんなにきれいな黄緑色だとは…!
(いつもは染料として購入しているので、カラカラに乾燥したグレーのものである)
そして
こんなに虫がいっぱいだとは…!!
虫こぶだから当たり前なのであるが、中から羽のあるアブラムシが結構出てきている。
ベランダ園芸で見慣れたアブラムシ、別に気持ち悪くはないが、袋の中にたくさんいるとなかなか見ごたえがある。
五倍子は「虫こぶ」であると再認識したひとときであった。
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キンモクセイの香りが漂う季節になった。
秋真っ盛りである。
ほのかに漂うキンモクセイの香りはどことなく優美でとてもいいものだが、いくらいい香りでも度を超すとツライものがある。
それを実感するのが丁子で染めているとき。
丁子―またの名をクローブ、スパイスでお馴染みのあの丁子である。
ウチではたまにしか使わないが、染料として使うといい色に染まる。
丁子は他の染料と同じく鍋で焚き出して染液を作るのだが、料理に使うときと違って使う量がハンパじゃない。
鍋に火をかけてしばらくは工房が何となくよい香りに包まれる。
が、それはだんだん「過ぎたニオイ」に変わっていく。
鼻腔を刺激し、ひどいときは頭が痛くなってくる。
貝紫の臭さとどちらがつらいかと言うと…もしかして丁子の方がツライかもしれない。
同じ土俵で比べられる種類のニオイではないような気もするが、貝紫のニオイはまさに「クサッ!!」という感じである程度予想(?)がつくような臭さ。
それに対して丁子のニオイはというと、エレベーターの中で香水のニオイのきつい人と乗り合わせたような感じであろうか。
あるいは徐々に神経をやられそうなニオイというか…。
何事もホドホドがいいと実感する染めである。
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工房の染め体験教室にはいろいろな方が来てくださる。
多彩な顔ぶれの皆様から仕事や趣味についてお話を伺うのも楽しみの一つであり、こちらが教わることも多い。
昨日紅花染め体験にいらしたUさんはまさしくそんな一人だ。
Uさんは奈良県の箱本館という紺屋(藍染め工房)で普段はお仕事をされている。
その外見からは想像がつかないが箱本館の藍(すくもの天然発酵建て)を建て・管理する藍建て師なのだ。
もちろん最初から体験教室に来る方の職業など知っているはずはなく、共に過ごすうちに大概何となく知ることになる。
「実は私、奈良の箱本館で…」
キラリッ!
―私の目が輝くのが自分でわかった。
箱本館?
藍建て?
あぁ、何という運命のめぐり合わせだろう。
神は私に天然発酵建ての極意を授けるべく、天然発酵建てのプロ、Uさんを遣わしたに違いない!
―勝手な思い込みで私の胸は高鳴った。
しかし今日はUさんは紅花染めの体験に来てくださったのだ。
そこんとこを忘れてはいけない。
いきなり藍について質問攻めにするのはお門違いというものである。
―私はチャンスを窺いながら素早く頭の中で聞きたいことを考えた。
質問1:藍を建てるためのポリバケツの大きさはどのくらい必要ですか?
質問2:藁灰で灰汁を作ったのですがよかったのでしょうか?
質問3:灰汁はどのくらいの濃さが必要なのでしょうか?
質問4 …
質問を10くらい考えたころ、タイミングよく藍の話ができるチャンスが巡ってきたのでまず「質問1」のポリバケツについて聞いてみた。
「この夏、ポリバケツで藍を建てて失敗したんですけど、自宅で藍を建てるんだったらどのくらいの大きさのポリバケツが要りますか?あのバケツを使ったんですけど…(とベランダのバケツを指す)」
「そうですね…自宅で安定した藍を建てるんでしたら最低120Lですね…」
最低ヒャクニジュウ?!
―思わずのけぞった。
大きさ、全然足らんやん!
ちなみに私は35Lのポリバケツを使っていた。
Uさんによるとすくもだけの天然発酵建ての場合、容器が小さいとうまく藍が建たないそうだ。
…でもウチで120Lより大きい容器って…フロしかないやん。
フロは室内にあるし、ここで藍建てたらクサイやろうなぁ。
質問1の回答にいきなり正常な思考回路が飛んだ私は、その後は本能の赴くまま、聞きたいことをどんどん聞いていった。
もちろんメモをとりながら…
灰の入手先、灰汁の作り方、すくもや湯の量、建て方の細かい手順、ポイント…
根掘り葉掘り聞き出し、この通りにすれば今度こそ大成功間違いなし!と思える、スバラシイ藍建ての覚え書きができあがった。
よし、これで大丈夫。
大きな容器をセッティングできる環境が整ったら、この覚え書きの通りにやってみよう。
でもしばらくは小さな容器でやってみないとなぁ…
聞きたい事を聞き、ひとり悦に入る私。
しかし考えてみたらUさんは染め体験に来てるんだよな。
私ばっかりいろいろ聞いてゴメンナサイ。
…と反省しつつ、家路へ急いだ。
そう、聞くだけ聞いて時間切れとなったので私はUさんの紅花染め体験教室を最後まで見届けることなく、帰ってきてしまったのだ。
後は店主とスタッフR子に任せて。
Uさん、今日は本当に失礼致しました。
そして本当に本当にありがとうございました!!!
これでまた今度ガンバル気が湧いてきました!
やるぞぉ!
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我が家の冷蔵庫にこの1年ほど入ったままのペットボトル、
その名は「柿渋」。
柿渋は天然染料の一つで、文字通り渋柿の液を発酵させたものである。
この液に生地を浸して天日干しすると、カッコいい茶色に発色する。
独特の色目・風合いは他の天然染料では出せないもので、柿渋専門で染めていらっしゃる染色家さんもいるくらいだ。
一般に仕事で使うような柿渋液はその熟成・発酵に匠の技が必要で、シロウトが作れるようなものではない。
ウチも相楽郡のある柿渋屋さんから購入したものを使っている。
しかし去年染織を趣味にしている知人から、自作柿渋でもそこそこいい感じに染まったという話を聞いた。
そこで私も試しに青い渋柿から液を作り、1年間期が熟するのを待っていたのだ。
そして期は熟した。
いや、正確には去年の9月20日に作ったからもうすぐ満期を迎える。
20日を過ぎたらその柿渋液を使って何かを染めてみよう。
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店主がとうとう爆弾発言をした。
曰く「藍太郎はもうダメなんじゃないか」。
ガ~~~~~~ン
めまいがしてきた。
ダメとは一体どういうことなのか?!
曰く
「インド藍の力を借りなくてはいけないような状態になっていてスクモの力ではない」
「ニオイがちょっと違う」
などなど…
店主自身、スクモの天然発酵建ての経験がほとんどないから断言できなかったそうなのだが、これはもう一度やり直したほうが良いのではないか、と。
そういえば最初の頃と比べて腐敗臭がちょっときつくなってきたような…。
私は死んだ子にせっせとご飯を食べさせていたということか?!
あぁ藍太郎、キミはもうインド藍の力を借りずにはパワーを発揮できないのか?
いろいろな想いが脳裏をよぎるが「ちがうわぃ!!藍太郎は生きているんじゃ~~!!」と怒鳴りつけるほど、私の経験値も高くない。
藍太郎よぉ…。
しかしこのまま引き下がるのは悔しい―
というわけで、お盆明けに外出先からもどってきたら私と店主が藍次郎と藍三郎をそれぞれ新たに建て、どちらが上手に藍を育てられるか、天然発酵建て競争をすることにした。
藍の天然発酵建て日記は「Ⅱ」としてお盆明けから再スタートの予定。
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最近工房に来る人によく「藍太郎くんは元気ですか?」と聞かれる。
一般のお客様からまでも聞かれることがある。
なので「その7」で「完」とした藍の天然発酵建て日記だが、調子に乗って続きを綴ることにする。
お客様から藍太郎のことを聞かれるとちょっと嬉しい。
いや、正直かなりウレシイ。
嬉しいついでにポリバケツの蓋を開けて藍太郎をお披露目する…ようなことは決してしない。
なぜなら臭いから。
前にも書いたかもしれないが、そのニオイはキョーレツである。
部屋の外にポリバケツを置いているのだが窓を閉めていても蓋を開けるとすぐわかる。
店主曰く、それはオナラのニオイなのだそうだ。
私の記憶では通っていた築100年の小学校の、木造校舎横の汲み取り式トイレが確かこんなニオイだった。
オナラでもボットン便所でもとにかく臭いことに変わりはない。
だが臭くても愛着を持てばそれは芳香に変わる…わけはないが、ニオイはあまり気にならなくなる。
通常のニオイに加えて若干腐敗臭を放っている今日この頃だが、相変わらずせっせと世話を焼く日々を送っている。
今日は先日買って帰った泡盛をエサにした。
泡盛と天然発酵建て藍は相性がいいらしい―そう聞いた私は早速酒屋に泡盛を買いに走ったのだ。
酒屋にはいろいろな種類の泡盛があり、値段もイロイロだった。
藍太郎にはよいものを与えたいが普段自宅で「その他の雑種」を飲んでいる身としては、藍太郎だけにそうそう高いものを与えるわけにはいかない。
迷った末に中ランクの泡盛を買った。
それがこの「八重泉」。
藍太郎よ、美味しい泡盛を飲んで元気を出しておくれ。
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「うぃ~~~っす」
友人Kさんがいつものようにふらりと工房に寄ってくれた。
もしかして藍太郎のために?
う、うれしい…。
ありがとう!!
…と思ったのは私だけで、店主とスタッフR子は「わーい!水飴~!!」と騒いでいた。
ま、人間がいただいても藍太郎が食べてもOKっちゅうことで。
Kさんは染色家…?である。
でも本業は染色業じゃないし、染めたもの売ってるから趣味でもないし。
とにかく染めに携わっている期間はウチよりずっと長い人で、この仕事を始めてから何かとお世話になっている。
藍の天然発酵建ても毎年夏になるとやっていて(今年はお休みみたいだけど)、彼によると水飴は藍菌?のエサになるらしい。
Kさんはウチのポリバケツを覗いて言った。
「う~ん、ちょっと腐敗臭してきてるなぁ…」
ガ~~~ン!
でも死んでるわけではないらしい。
水飴を少し与えて2,3日そっとしておいて、あと応援の藍菌を追加するためにスクモかインド藍を準備しておくといいとのことだ。
「それからなぁ、ポリバケツが小さすぎると思うで。あと最初の頃はあんまり混ぜたらあかんで。混ぜるのはブクブクしてきてから」
R子が「ホラミロ」みたいな顔で私を見た。
「Kさん(これは私のこと)、過保護はいけませんよ~」
…うるさぁ~~い!!
しばらくそっとしておいて、もう一度作戦を立て直そう。
あー、天然発酵建てって奥が深い。
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藍を建て始めてから約2週間。
よっしゃぁぁぁ~~~!!
という感じにならないまま、時が過ぎて行く。
「藍太郎くん、もしかして…まずいんと違う?」
というオットの遠慮がちな、でも実は結構ストレートな意見も無視し、毎日あれこれやってみていたが、正直私も少し不安になってきた。
そこで今の状態を客観的に見るべく、Tシャツを1枚染めてみることにした。
「藍太郎、頑張れよぉ…」
染めながらちょっと語りかけてみる。
「…うん、ガンバル…」
と言ったかどうかは定かでないが、軽く絞って洗って干す。
結果―
縹色には程遠いが、ちゃんとブルー系に染まった。
ということは藍太郎は死んではいない、ということだ。
画像ではわかりにくいが、確かに染まっている。
あぁ、ヨカッタ。
…と思いつつ、小麦ふすまと日本酒を与えた。
頑張れ!藍太郎!!
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藍太郎の様子がおかしい。
(注:「藍太郎」とは仕込み中の灰汁建て藍のことである。)
14日のブログでも書いたがそれまでは比較的順調だった。
最終段階で石灰を加え、翌日から染めに入るはずであった。
しかしその最終局面にきて突然藍の華(藍特有の泡)が消えてしまったのだ。
藍太郎~~!
一体どうしたというんだぁ~~~!!
それからというもの、藍太郎の体力回復のためにいろいろ試している。
が、状態は日に日に悪くなり、色つやも衰え傾向にある。
試しに染めてみたらうっすらと水色に染まったものの、その色はにごった色で具合の悪さを物語っていた。
何がいけなかったんだろう…?
私は考えた。
灰汁のPHが低かったのか?
それともスクモを粉々に砕いていなかったせいか?
あるいは前日煮て準備したふすまに少々腐敗臭が漂っていたせいか?
はたまた最後の石灰投入のタイミングが悪かったのか…
あれこれ考え、何とか回復しないかと日々画策している。
しかし状況は思わしくない。
あぁ…頑張れ、藍太郎!
ところで私がここのところ「藍が…」「藍太郎~」と言い続けているので、スタッフR子ちゃんと店主は藍の夢を見たらしい。
R子ちゃんのは藍がうまく建って狂喜乱舞した私が染めまくっている夢。
店主のは染色界の大御所Y氏がウチの工房の藍を見て「こりゃもうダメだよ」と告げる夢。
…縁起悪いなぁ。
Yさんが来ませんように。
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藍を建てはじめてから5日目、色・ニオイ・見た目と3拍子揃ってかなりいい感じになってきた。
毎日何度もバケツのフタを開け、ある時はエサをやり、またある時はおかしな様子がないか観察し…あ、これは子育てと同じではないか!
愛情を持って接していればそこは人間も藍も同じ生き物、必ず気持ちは通じるんだなぁ…
ある種の感動を持ってポリバケツをしげしげと眺めていたが、
「臭いから早くフタ閉めて!」
という店主のひと言で現実に戻った。
そう、藍染めはクサイのだ。
以前貝紫が臭いと書いたが、藍染めの臭さもハンパではない。
すくもの天然発酵建ての藍の臭さは例えて言うならば…ドブのニオイ?
いや小学校の時に古~い木造校舎の隣にあった、オバケが出るというウワサの古~い木造トイレ(ぼっとん便所)、そのニオイが近いか?
とにかく天然染料にはクサイものが多いとはいえ、1,2を争う臭さではないだろうか。
しかしどんなに出来が悪くても、ヒト様から見てきたなくても、愛情を持つことが出来る―それが親というものだ。
―私は人生の深い部分を子育てと藍から学んだ。
前置きはいいとして、そろそろ藍建ての作業も最終段階に入る頃合いである。
3回目の石灰投入をして放置すれば明日には染められるようになるだろう。
「さぁ、ごはんの時間だよ」
混ぜながら静かに石灰を入れた。
藍は美味しそうに…石灰を飲み込んだ。
これで一旦作業は終了。
明日からは染めながら藍の維持・管理を怠らないようにすればいい。
早く染めてみたいなぁ…。
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先週の土曜から本作業に入った藍の天然発酵建て。
予定では2,3日で液の表面に独特の薄い膜のようなものが張ってくるはず…。
毎日毎日ポリバケツ(ポリバケツで藍を建てている)のフタを開けて今か今かと待っていた。
「Kさん(私のこと)、また覗いて見てるんですかぁ~」
スタッフのR子に呆れ顔で言われた。
確かにマジックじゃないんだから、さっきまで何ごともなかった液面に突然膜が張る訳はない。
でも…
ついつい覗いてしまうんだよぉ~~~!!
店主やR子に笑われながらも藍の様子を窺うこと数十回、ついに機は熟した。
見ようによっては液表面の一部に膜が張っているように見えるようになったのだ。
あんまり嬉しかったので作業中の店主を無理矢理呼んできた。
私「(上ずった声で)ちょっと見て見て!とうとう膜張ったで!!ホレ!!!」
店主「…まぁ見方によっては膜に見えないこともないけど…」
私「(かなり強引に)そうやろ?もうそろそろ次の段階に移っていいやんなぁ?!」
と言いながら店主の返事もロクに聞かずにすぐに次の段階に移った。
次は石灰を入れ、一日に数回混ぜて藍の華(表面の泡)が出来るのを待つのだ。
ブツブツブツ…
と泡立つ音が聞こえたような気がした。
藍の呼吸音だろうか?
おぉ、藍よ、キミはやっぱり生きているんだね!!
初回の攪拌では私一人だけが藍の鼓動を聞いて(信じて?)喜んでいた。
しかし店主とR子の反応は今ひとつ。
「ネ?ネ?泡立つ音が聞こえるよね??」
興奮気味の私を肯定するでも否定するでもなく、曖昧な返事をする二人。
まるでそれほど可愛くない我が子を他人に見せて、無理矢理「可愛いでしょ?」と言っている親のようではないか!
何度もポリバケツのフタを開ける私をちょっと馬鹿にして見ていた二人だったが、何となく藍の華っぽい泡が立ち始めたのを見てちょっと様子が違ってきた。
ホラ見ろ。やっぱりうちの子は可愛いんだ!
藍を我が子のように思い始めた私の背後で携帯カメラの「シャララララ~~ン」というシャッター音がした。
振り向くとニヤニヤ笑っている店主が立っていた。
何でもあまりにも落ち着かない様子の私が可笑しくて、店主ブログのネタにするらしい。
シツレイナ!
イマニミテイロ。
立派な藍に育ててみせるぞ!!
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春に種を蒔いた藍はぐんぐん成長し、7月初めごろに一番藍を刈り取ることができるようになる。
ちなみにウチの家で蒔いた藍は播種時期が遅かったのと、比較的涼しい日が続いたこと、プランターであることなどからまだ本葉が数枚の若い苗の状態である。
今回の染めに使ったのは公園の花壇に植えてもらった地植えの藍、う~ん、地植えモノはやっぱり茎も葉もしっかりとしていて違うなぁ。
さて、染め方である。
①刈り取った藍の葉だけを取って集める。
②集めた葉を洗濯用のネットに入れ、水と染めたいものと葉を詰めたネットを一緒に大きめのボールかバケツに入れる。
(葉は別にネットに入れずに直接ボールに入れてもいいのだが、直接だと揉みだしていくうちにモロモロになった葉が染めたいものにくっつき、糸などを染める場合は後で取るのが大変だから。)
今回私が染めたのは絽縮緬の帯揚げ。
最初白かったものがみるみるうちに青くなっていく。
ボールが浅くて帯揚げが空気にふれるからかすぐにターコイズブルーのような色に発色したが、普通は藍の液中では緑がかった色で空気に触れることによって青に変わる。
乾くと落ち着いた水色になった。
夏っぽい涼しげないい色合いだなぁ。
簡単で楽しい生葉染め、子供でも上手く染められる。
長男は去年の夏休みの自由研究で染めた。
種さえ手に入れば育てるのも簡単な藍、今年は種を取ったら染め方を書いた紙をつけて「ご自由にお取り下さい」として店に置こう。
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今年も藍を建てる季節がやってきた。
天然染料で染める染め屋をやっていて藍ももちろん天然藍を使っているが、ウチの藍は化学建て、つまりスクモを自然発酵させて作る藍ではないのだ。
これには藍は他の染色と違って管理が難しいことやコストのことなど、いろいろな理由があるのだが、まぁ早い話藍の天然醗酵建てについては「勉強中」ということだ。
そして今年も気温が十分上がってきたので勉強する季節になったというわけだ。
藍は植物・生き物であり、植物・生き物については店主より園芸好きの私のほうが向いているに違いない、というあまり根拠のない理由から天然醗酵建てチャレンジャーの名乗りを挙げた私は、早速準備にかかった。
まず必要なものを揃える。
スクモ。
これがなくっちゃ始まらない。
うちのは兵庫県の中ほど、西脇市で作っているスクモだ。
以前その作業場にお邪魔したことがあるが、スクモ作りは大変な労力を伴う仕事だということを実感した。
ココロして使わせていただかなくてはならない。
そして他に必要なものはポリバケツ・小麦ふすま・灰汁など。
灰汁を取るために藁灰に水を加え、上澄み液ができるまで寝かせる。
さぁ、前々日の作業はできた。
あとは前日の作業がもう少しあり、そして土曜日からいよいよ本作業にとりかかろう。
今年こそ見事天然醗酵建てを成功させ、化学建てでは出せない色を出してみせるぞ。
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スタッフのR子ちゃんが沖縄染め織りの旅から帰って来た。
もともと南国風の顔立ちだが日焼けして更に現地の人のようになった彼女は、遠くを見つめるような目で沖縄の日々を語ってくれた。
「…もぉすんごく楽しかったんですよぉ~~」。
いろんな収穫があったようだ。
島藍農園さんでの藍づくりの体験をはじめ、いろいろなところでの染め体験、そして泊った宿での出会い…。
中でも泊った宿の経営者男性との出会いは忘れがたいようだ。
「帰らずにこっちにいれば?Rちゃんさえよければいつまでここにいてくれてもいいんだよ」
「…でも、私は染め修行中の身なんです…一旦京都に戻って考えさせてもらえませんか…?」
見つめあう二人―
というのはウソである。
R子ちゃんが不在の間、店主と「こんなことがあったらオモシロイのになぁ。結婚式は是非沖縄でしてもらってさー」と無責任にアレコレ言ってたネタのうちの一つである。
残念ながらロマンスとは無縁の旅だったようだが、いろいろなよき人たちとの出会いがあり、彼女の染色に対する熱い思いは更に高まったようだ。
沖縄には本土にはない植物が多数あり、染色に使える植物もいくつかあるのだがその一つがフクギである。染めると爽やかな黄色になる。
なんでもR子ちゃんが行った博物館でお土産用(?)染料として売っていたそうだ。
最初「5000円」の値がついていたが「高い…」と買い渋る彼女を見てショップのお兄ちゃんは「2000円でええわ」と声をかけてきたそうだ。
そんなんアリ?
沖縄って東南アジアやわ~。
しかし東南アジア系沖縄のお兄ちゃんより大阪のおばちゃん予備軍のR子は強かった。
「1000円しか持ってへんし、1000円分だけちょーだい!」
「…しゃあないな。全部で1000円でええよ。」
ウソいつわりのないホントの話である。
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散々クサイと言ってきた貝紫であるが、染めると他の染料では出せない美しい色になる。
染め方はカンタン。
パープル腺をアルコールと一緒にミキサーで攪拌して水を加え、その液に染めたいものを浸して戸外に干すだけ。
もっと単純にパープル腺を筆にとって絵や字を描き、それを日光に当てるだけでもきれいな紫色になる。
いずれにしても干す時のお天気によって発色具合が左右される。
今回はパシュミナストールを染めることにしたのだが、この日はあいにくの曇り空。
「午後から回復する」という天気予報を信じて作業したのだが、晴れ間は見えない。
このままではいかん…。
これではただのクッサ~イ布ではないか…。
そこでちょっと裏ワザを使うことにした。
染液をハイドロで還元し、熱をかけて染める方法に変えたのだ。
染液をコンロにのせ、火をかける。
ク、クサイ…。でもガマンガマン。
耐えること数十分。
そしてジャジャ~ン!!
洗濯仕上げして出来上がり!
磯の香りのストールの完成。
そう、ニオイは洗ってもなかなか消えないのだ。
これは時が経つのを待つしかない… (-_-;)
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パラサウロロフスTシャツが完成した。
4月28日に作り始めて1ヵ月あまり。
柿渋がいい具合に発色したので洗濯して糸をほどいて完成の運びとなった。
自宅に持って帰り、パラサウロロフス好きの次男に見せた。
私「これなーんだ?」
次男4歳「(しばらくじっと眺めて)…パラサウロロフスや!すごーい!!」
目をキラキラさせて大喜び。早速着てくれた。
夜なべしたかいがあったよ。
うるうる。
次男4歳「次はチンタオサウルスと××××サウルス(名前聞き取れず)がいい!」
えっ?次?
それは勘弁してくれよ…。
ちなみに私が聞き取れなかった恐竜名を長男8歳に聞くと、
「あぁ、全部カモノハシ竜ね」
とサラッと答えた。
―子供に負けたと思った瞬間。
*************
パラサウロロフスTは遊びで作ったものだが、遊びで作ったものから好評に付き商品に昇格したものもある。
普通バージョンと踊るバージョンがあるのだが、たくさん「カネ○ン」を作ってきたので、シルエットだけならフリーハンドで描けるくらいだ。
何体の「カネ○ン」がお客様のもとに養子にいったであろうか?
愛着沸く1点である。
しかし、実は個人的に一番気に入っているのはこっち。
これは私の持つデザイン力(って私が作ったキャラちゃうけど)と技術力(ってチクチク縫うだけやけど)の最高峰レベルの出来だと思っているんだけど…お客様の反応は今ひとつ。
「こっちもかわいいけどカネ○ンも捨てがたいな…今回はやっぱりこっちにしときます。」
とインベー○ーを見捨ててカネ○ンに乗り換えられることも度々。
かわいそうなインベー○ー。
出来の悪い子ほどかわいい、そんな心境。
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アカニシから染料となるパープル腺を外す作業をした。
アカニシは一般に貝紫染めと呼ばれる、紫色を染め出すことのできる貴重な染料だ。
アカニシとは違う種類の貝ではあるが、貝紫はクレオパトラやシーザーが好んで使った色であり、1枚の布を染めるのに何万個もの貝を必要とした大変高価な染めであった。
「であった」と過去形で書いたが貴重な染料であることは今も変わらない。
その貴重な染料のもとであるアカニシをあるお鮨屋さんから分けていただいた。
染料となる部分は「パープル腺」という、貝の内臓のごく一部である。
それを一つずつ取り外さないと染料としては使えない。
染めに入る前の作業がなかなか大変である。
①まずお鮨やさんが送ってくれた瓶詰めのアカニシを冷蔵庫から取り出す。
ぷ~ん
…磯の香りが漂う。
冷蔵庫を開けただけで海の家の気分。
②瓶の蓋を開け、ボールに中身を取り出す。
ぷ~~~ん
…腐った魚が置いてある港のニオイが充満する。
「磯の香りがするね」とスタッフの子に言ったら「そんないいもんじゃないです!!」と怒られた。
私はパープル腺除去作業はまだ初日、彼女は3日目。
ニオイで相当参っているらしい。
③ボールから一つずつアカニシの内臓を取り出し、ナイフの先で広げながら黄色いパープル腺の部分を取り出す。
…かなり臭い。内臓だから臭いのは当たり前。だがかなりキツイ。
でも作業をしているうちに意に反してお腹が空いてきた。
「なんかお腹すいたなぁ」とつぶやいたら「このニオイの中で信じられない!!」と店主・スタッフR子の攻撃を受けた。
… … …
手袋をして作業をしていたにも関わらず、なんだか指先が海のニオイがする。
美しい色を出すためには努力が必要だ。
パープル腺取り出し作業はまだまだ続く。
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日頃からお世話になっている三浦清商店さんで、先日紬の白生地を購入した。
この生地、なんと手織りである。
機械織りの生地も見せていただいたが、やっぱり手織りの方がぷっくりとした味わいがある。
少々迷ったが清水の舞台から飛び降りるつもりで手織りの紬を手に入れた。
今回はお客様からのご依頼ではなく、あくまで私物の染めもの。
袷の着物に仕立てるとして、どんな色にするか考えただけでウキウキしてしまう。
生地端を試し初めしてみたら想像以上に濃く色が入り、光沢が出てとても美しい染め色になった。
早く染めてみたいな。
もっともこの生地は気合を入れて染めないといけないので、夫が染めるらしい。
ちょっと残念だが仕方ない。
仕上がる日を待とう。
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日曜日、友人からメールがきた。
「今年は葛のはっぱいらないの?」
あぁ、忘れていた。そんな季節なんだ。
葛で染めなきゃ!
~その後、親切な友人は出かけた先で見つけた葛の葉をビニール袋いっぱい採ってきてくれた。
実際の草木を使って染めるときはその季節にしか出せない色がある。
葛の葉を使ってそめる「緑」もその一つだ。
意外だが、緑単色を出す方法は草木染めにはあまりない。
古来より行われている緑を出す方法は黄色系の染料で染めた上に藍で重ね染めをしている。
だからなおのこと、この季節に出せる葛の緑は貴重だ。
友人から葛をもらい受けた翌日、早速絹糸を染め始めた。
う~ん、いい色だなぁ。
ちょっと「草木染めらしからぬ色」だが、そこがまたいいところ!
月曜から染め始めて今日やっと洗いに入れる。
あとはよく乾燥させて完成。
できあがりが楽しみだ。
最近更新してない「染めもの倶楽部」も早く更新しないとね。
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